敬語の種類と活用
1 敬語で主語を見極める
 敬語には、次の3種類があります。
@尊敬語(為手尊敬)…動作をする人(主体)を高める言い方
[例]のたまふ(おっしゃる)
A謙譲語(受けて尊敬)…動作を受ける人(客体)を高める言い方
[例]奉る(差し上げる)
B丁寧語(聞き手尊敬)…読者や聞き手に対する丁寧な言い方
[例]侍り・候ふ(あります/おります)

 さて、ここまでは皆さんもお分かりだと思います。問題はここからです。

古典ってよく主語でもなんでも、省略できるものは省略していますよね。だから、よく会話文が出てきても誰が言ったセリフなのか、主語がはっきり分からない事があります。

 その主語をはっきりさせてくれるのが敬語表現なのです。(高貴な人が多い場合などは、判断不可の時もあります)

 簡単な敬語の判別法としては、まず丁寧語かどうかを見極めます。丁寧語は「侍り」「候ふ」の2語しかないので、その敬語が「侍り」「候ふ」以外だったら尊敬語か謙譲語であると分かります。
 ここで、問題にふれてみましょう。

(かぐや姫は)おほやけに御文奉り給ふ。(竹取物語)
天皇にお手紙を差し上げなさる。

敬語が二つあります。主語がかぐや姫という高貴な人なので「給ふ」は尊敬語として使われています。また、このケースはかぐや姫が天皇に手紙を渡すというシチュエーションです。天皇は超高貴な人なので天皇を高める言い方もしなければなりません。

つまり、今回はかぐや姫も天皇も両方高貴な身分なんです。そこで使われるのが謙譲語です。謙譲語は動作を受ける人を高める 言い方でした。そして、かぐや姫も高貴な姫なので動作をする人を高める 言い方をする尊敬語の「給ふ」を使って高めます。つまり、この「奉り給ふ」という表現で作者は天皇とかぐや姫の両方を高めている事になります。

 ちなみに、天皇はどんな時でも常に一番高貴な身分として出てきます。そういう人にはただの尊敬語を使うのではなく、 二重尊敬を使います。二重尊敬は文字通り「尊敬語を重ねて使う」のです。

また、自尊敬語 というものもあります。これは天皇が主に自分で自分を高める言い方です。
最後に、絶対敬語ですが、これは「奏す」「啓す」といった特定の相手に限定して用いる語です。「奏す」は天皇や上皇、「啓す」は皇后、中宮、皇太子などを対象として使う謙譲語です。

 さて、本題に移ります。今回のテーマは「敬語で主語を見極める」でした。まとめを言います。

尊敬語が使われている→主語は「高貴な人
二重尊敬が使われている→主語は「飛びぬけて高貴な人
謙譲語が使われている→主語は「一人称である可能性が高い

 また、尊敬語には助動詞もあるという事を忘れないで下さい。

2 本動詞・補助動詞の区別をつける
 どうやら、本動詞と補助動詞の区別に困ってる人が多いようです。補助動詞っていうのは敬語が動詞の下にくっついてる場合です。(正しい定義は「本来の意味を失って助動詞のように上の語を補助したり、ある意味をを添えたりする用法を持つ」です)次の例文を見て下さい。

殿、給ふ(殿が、お与えになる)→本動詞の用法
殿、帰り給ふ(殿が、お帰りになる)→補助動詞の用法

敬語が補助動詞の場合、動詞に次の意味を添えます。

尊敬の補助動詞→お〜になる・〜なさる
謙譲の補助動詞→〜申し上げる
丁寧の補助動詞→〜です・〜ます

3 尊敬の助動詞を知る
 尊敬の助動詞は「る・す・らる・さす・しむ・」の5つです。しっかり覚えましょう。この助動詞があると、主語は高貴な人、無いと主語は高貴では無い人という風に判断できます。

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