和歌の基礎知識*掛詞
1 掛詞とは?
 掛詞は、通常「一つの言葉に二つの意味」が掛かっています。まれに「一つの言葉に三つの意味」が掛かる場合もありますが。

 さて、掛詞を読解するのは、結構難しいように感じます。しかし、これは実は手がかりがあります。一つ目の、「一つの言葉」はすぐに見つかると思います。二つ目に、「意味」というのは実は「訳がギクシャクしているところ」に掛詞が隠されています。
逆にいえば訳がギクシャクしていなければ掛詞はないということです。

山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
[文法]ぞ…強意の係助詞(訳す必要はない)  ける…詠嘆の助動詞「けり」の連体形
   ぬ=完了の助動詞  ば=「思へ+ば」は「已然形+ば」でこの場合は「〜(思う)と」と訳す。


 まずは掛詞を意識しないで素直に訳してみます。第一句から第三句を訳すと、「山里は、冬がさびしさが勝っているなぁ」となります。「他の季節よりも冬が一番寂しい」ということでしょう。訳はギクシャクしていないので掛詞は無い、と判断します。

 次に第四句から第五句です。「人目も草も枯れてしまうと思うと」となり、「@草が枯れ」は理解できますが、「人目も草も」と並列しているので、「A人目もカレ」たということになります。これを@と同じく「枯れ」と解釈すると意味があべこべになってしまいます。つまり、もう一つの意味がある―掛詞です。

 では、ここでの「人目もカレ」とは、どのような意味なのでしょうか。

 内容を思い出して下さい。「冬のさびしさ」を詠んだ歌なので「人目が少なくなる」こと、即ち「人の訪問がなくなって人間関係が疎遠になる」ことを意味しています。

 実は、古語には「離る」という言葉があって、ここは「A人目が離れ(=人が離れて逢いにこなくなる)」という意味になるのです。これは暗記が必要です。

 また、注意しておきたいのは、「訳を書け」とテストで言われた場合、二つの意味の違いが明確に分かるように漢字で表記する必要があるのを覚えておいて下さい。
枯れ…<景色描写>     離れ…<人物描写>

2 掛詞のパターン
 掛詞は、多くの場合、<@事物・景色描写><A人物・心情描写>が掛かっているといえます。作者がより強く表現したいのは<A人物・心情描写>です。なので、作者の気持ちになって掛詞を探すことが大切です。

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