羅生門
原典「今昔物語集」:平安末期(「今は昔…」で始まる)
P18「ある日の…一人の…」
→特定できない表現(客観化させず、臨場感を意識していると考えられる)
l2
「この男の他にはだれもいない」(l5に反復)
→さびしい情景を印象付ける効果がある。

l6〜
羅生門に人気がない理由
→l7 当時京都の町がさびれていた。
(「洛中」→京都市内(平安左京) 「洛」=洛陽→平安京の異称 上洛≒上京)
l7
「旧記」…方丈記(鎌倉初期):鴨長明
「旧記」の記述→仏像や仏具…金銀の箔が…薪の科に売っていた」
→文化的(宗教・美術など)価値観が崩れ、生活が過度に優先される様子(当時の京都の(l7)「さびれ方」の説明。)
P19 l6
「日の目」→明るさによる人の可視感をあらわしている。
「日の目をみる」とはことなる。
P20 l7
「作者は…と書いた」
(書き出しとは反対に)場面を客体化させる効果がある。(客体に対する視点を読者と共有する形にし、場面の見方を導いている。)
l10
「暇を出された」…解雇された
l15
「申の刻下がり」…午後四時過ぎ
P21 l7
「どうにもならないことをどうにかする」(→l1を受けた反復表現)
下人にとって、今後の行動のあり方を決める重大な発想となっている。

「どうにもならない」⇔「どうにかできない」←矛盾→「どうにかする」
どうにかするためには、元の「どうにもならない」に達する前の条件(l7〜「手段を選ぶ」(例l13「盗人」にならない)に向き合わざるを得ない。
→倫理観に基づいて行動するかどうかが、ここでは問題視されている。
P21 l15
「大儀」…苦労、面倒
P22 l4
「人目にかかるおそれのない…」
下人にとってそれ程気にする必要がなさそうな基準。(単に人に煩わされたくない、とも考えられるが、まだ実行していない「盗み」への罪悪感とも取れる。)
→l7「どうせ死人ばかりである」
→下人の感性の倒錯性が表れている。
l7
「太刀が鞘走らないように」
→刀が粗末であるのか、下人が刀の扱い不慣れであるか。下人の人間的卑小さを表現している。
P22 l10
「羅生門(当然(指定する必要がない))の桜の上へ出る、幅の広いはしごの中段に(l6に既出)、一人の男が…(「下人」(既に述べられている人物))」の改めて述べる意味
→情報としては価値がない。与える印象を意識していると考えられる。
「情景を視覚的に改め、新たな展開を予感させる」など。
l14
「高をくくる」…予想して侮る
P23 l13
「永久に」…ここでは強調。
l15
「ある強い感情」
→P24 l5「…恐怖と…好奇心」
l5
「暫時」…しばらく
P24 l10
下人の恐怖心の消え方を、「髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って」と表現している。
l16
下人の(l12)「あらゆる悪に対する反感」を「床に挿した松の木片のように勢いよく…」(P23 l7に火が大した勢いでないことを印象付ける効果がある)と表現している。
→意図的に不器用な喩えを続け、段差に描かれたものに低劣な印象(下人の軽薄で、独善的な一時の正義感に至る心理展開)を持たせようとしているとも考えられる。
P25 l4
「それだけですでに…悪…」
生理的・直感的
P25 l4
「この雨の夜に、この羅生門の上で」(P23 l1と同様の表現)
→「今自分がいるような特殊な希望のない状況で」という、その状況の、下人にとっての私的さ、個人的さを強調している(自分勝手な判断であることも示唆)。
P25 l11
「おのれ」…
@一人称(卑語的)または反照代名詞
A二人称卑語
B感動詞(怒り等を表す)
この話ではBの意味で使われている。
l16
「鶏の脚の…」P24「猿」P26「肉食鳥」他「鴉」「蟇」など、生々しさや不気味さに結びつくような動物を比喩に用いている。
P26
老婆を自分の意思の支配下に置いた下人の感情。
「憎悪の心を…冷ましてしまった」「仕事…が成就した…得意と満足があるばかり」
P23「ある強い感情」→恐怖:好奇心→憎悪→満足(解決)
P26 l10〜
下人の、この状況に抱く感情は、ほとんど「好奇心」しか残っていないとも考えられる。
→l10「声をやわらげて」
 l11「旅の者だ」(関係深い者ではない)
 l13「話しさえすればいいのだ」

それ以前に表現されていた正義感などのような思い入れは見当たらず、単に知りたいことがわかるようにという動機が優先されている。

P27 l4
「答えが存外、平凡なのに失望した」
→好奇心に値する答えではなかった。
l5
「憎悪」「侮蔑」
→「気色が…通じたのであろう」老婆がその行為の背景を説明する。
P27 l13〜
老婆の、行動の倫理についての説明。
・生きるために「しかたがなく」することは悪ではない。
・それを知っている者は、されても理解するはず。
P28 l7
老婆の説明がもたらす、下人の心理展開。
「勇気が生まれてきた」
→「さっき門の下…欠けていた勇気」で、「老婆を捕らえた…反対…」のもの
 →正義感、倫理観(l11「意識の外に追い出されていた」)
l12「きっと、そうか。…では俺が引剥ぎをしようと恨むまいな。俺もそうしなければ飢え死にをする体なのだ」
P29 l9
「黒洞々たる夜」
l11
「下人の行方は、誰も知らない」
→場面の暗さや状況の不安定さを印象付け、作品全体に描かれている人間性の闇(醜さ、不確かさなど)が暗示されている。

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