いろいろな力
Point1 基礎事項
接して及ぼされる力…張力、弾性力、抗力、浮力、摩擦力 など。
離れた物体から及ぼされる力…重力、正電気力、磁気力  など。

物体に力がはたらく時、力がはたらく点を 作用点 といい、作用点を通り力の方向に引いた直線を 作用線 という。

力は大きさと向きを持つベクトルである。また、力の大きさを表す単位は運動方程式から導かれる ニュートン(記号N) が用いられる。

Nのほかに、質量1kg、1gの物体にはたらく重力を単位とする重量キログラム(記号kgw)や重量グラム(記号gw)が用いられる事がある。これらはキログラム重、グラム重とも呼ばれる。1kgw=9.8Nである。

地球上の物体は、地球から地球の中心に向かう力を受けている。この力を 重力 といい、その大きさを物体の 重さ という。物体はその運動状態(静止、運動の速さ・向き)によらず、常に同じ大きさの重力を 鉛直下向き に受けている。

物体の重さはその質量に比例し、質量がm[kg]の物体の重さはmg[N]である。地球上では g≒9.8m/s2 であるから質量1kgの物体の重さはおよそ(1×9.8=)9.8Nである。

一般に物体に接する面が物体に及ぼす力を 抗力 といい、とくに面が物体に面に垂直に及ぼす力を 垂直抗力 という。机においた物体が静止したまま動かないのは、物体の重さと机からの垂直抗力が釣り合っているからである。

糸が物体を引く力を 張力 という。この力は、糸が張られたときに両端に現れる。重さが無視できる糸(軽い糸と表される事が多い)では、張られた糸が両端で物体を引く力の大きさは等しい。



物体を水平なあらい面上に置き、水平方向に引くと、引く力fが小さいうちは物体は動き出さない。これは、面から物体に面に平行な逆らう力がはたらくためである。この力を 静止摩擦力 という。

また、物体があらい面上をすべっているときも、接触面で運動を妨げる力がはたらく。この力を 動摩擦力 という。

問題文中では摩擦の有る面を あらい面 、摩擦を無視できる面を なめらかな面 という。

引き伸ばされたり、押し縮められたりしたつるまきバネなどは、もとの自然な長さ(自然長)に戻ろうとして(この性質を 弾性 という)、両端につながれた物体に力を及ぼす。このように、力が加わって変形した物体がもとの状態に戻ろうとして他の物体に及ぼす力を 弾性力 という。

(1)弾性力の向き…伸びているときは縮む向き、縮んでいるときは伸びる向き。
(2)弾性力の大きさ…弾性力の大きさF[N]は伸び(または縮み)の長さx[m]に比例する。

これを フックの法則 といい、 F=kx と表される。比例定数kはばねによって定まる定数で、 ばね定数 といい、単位は ニュートン毎メートル(記号N/m) である。
この公式は伸び・縮みの両方に使える。xは自然長からの伸び(縮み)であり、ばね全体の長さや釣り合いの位置からの伸び(縮み)ではない。

また、連結したばねの場合のばね定数kの値は、
(1)並列つなぎの場合…k=k1+k2...
(2)直列つなぎの場合…1/k=1/k1+1/k2...



物体の面1m2あたり何Nの力を及ぼしているのか、これを 圧力 という。面積S[m2]の面に大きさF[N]の力を垂直に及ぼすとき、圧力Pは次の式で表される。

圧力P=F/S

面積1m2あたり1Nの力が加わるときの圧力を 1パスカル(記号Pa) といい、100パスカルを 1ヘクトパスカル(記号hPa) という。この他に ニュートン毎平方メートル(記号N/m2) や 気圧(記号atm) などが用いられる。1N/m2=1Pa1atm=1.103×105Pa.

気体の圧力は容器の壁に垂直で大きさはどこでも等しい。気体の圧力のうち、とくに大気による圧力を 大気圧 という。

水の力による圧力を 水圧 という。
(1)容器の側面には垂直に垂直に、水中ではどの方向にも面に垂直にはたらく。
(2)水の密度をρ[kg/m3]とすると、深さh[m]の点の水圧P[Pa]は次のように表される。
水圧P=ρhg

→水圧Pの導き方
水中に水深h[m]を高さとする底面積S[m2]の水柱を仮定する。
  水柱の体積V=Sh[m3]
  水柱の質量(密度×体積)m=ρV=ρSh[kg]
よって水圧P=F/S=mg/S=ρShg/S=ρhg[N/m2(=Pa)]

気体と液体を総称して 流体 という。物体を流体中に置くと、物体は重力のほかに流体から押し上げる向きの力を受ける。この力を 浮力 という。浮力について、次の アルキメデスの原理 が成り立つ。

●アルキメデスの原理
 流体中の物体は、その物体の流体中の体積と同じ体積の流体の重さと等しい大きさの浮力を受ける


浮力F=ρVg

身近な例でいうと、水で満杯にした容器におもりを入れると水が容器から溢れ出す。このとき、おもりによって追い出された水の重さの分だけ浮力が生じる。


例題
(1)高所にある貯水タンクから蛇口まで水が流れている。タンク内の水面は蛇口から5.0mの高さにある。この蛇口の位置での水圧P[Pa]を求めよ。ただし水の密度を1.0×1.03kg/m3とする。

(2)質量0.40kgの鉄球に糸をつけてつるし、全体を水に沈めた。この時、糸が鉄球を引く力の大きさT[N]を求めよ。ただし、水・鉄の密度をそれぞれ1.0×1.03kg/m3,8.0×1.03kg/m3とする。

解答
(1)P=ρhg=1.0×1.03×5.0×9.8=4.9×1.04[Pa]

(2)鉄球の体積V=0.40/8.0×1.03=5.0×1.0-5
 鉄球の重さ W=mg=0.40×9.8=3.92
 浮力     F=ρVg=1.0×1.03×5.0×1.0-5×9.8=0.49
重力・浮力・張力のつり合いより
 T=W-F=3.92-0.49≒3.4[N]

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