金属材料の強さを学ぼう
機械材料のもつ力学的性質について理解しておくことは、機械工学を学ぶ上で最も重要な事項の一つです。なぜなら、いくら素晴らしい機械を設計しても、その機械にはたらく荷重の種類や応力と変形などを知らなければ、その機械は壊れてしまうからです。ここでは、材料の種類とその強さについて、さまざまな実験を通して学びます。
[1]機械材料の種類
SS400 [N/mm2] (軟鋼、一般構造用圧延鋼材)
JIS鋼材の中でもっとも多量に生産され、車両・船舶・建築物・橋など、一般的な構造物に使用されている材料です。
S45C (硬鋼、機械構造用炭素鋼)
軟鋼より信頼性が高く、歯車・軸などの機械部品や構造用として、切削などの加工と熱処理を施して使用されている材料です。
FC200 (ねずみ鋳鉄)
鋼より多くの炭素を含む鋳鉄は、融点が低く、湯流れもよいため、複雑な形状や薄肉ものの鋳造用として使用されている材料です。
A7075 (アルミニウム合金)
密度は鉄の約1/3と軽く、電気や熱の良導体で、外観が美しく、加工しやすい材料です。
C2600 (黄銅、真ちゅう)
Cu-Zn系の合金。電気や熱の良導体で、大気中の耐食性にすぐれ、加工しやすく、色や光沢が美しい材料です。
マグネシウム合金
密度が鋼の約1/4、Alの約2/3と実用の金属材料中最も軽量である。
チタン合金
引張強さが大きく、耐熱性・耐食性などがある。
[2]引張試験
▼SS400の引張試験を行い、その機械的性質をまとめる。
1)試験前の平均直径Dmから原断面積Aoを求める
Dm=14.00mm Ao=153.86mm2
2)最大引張荷重Pmaxを測定し、単位を変換する
Pmax=12200kg=119560N
3)破断後の標点距離を測定する(Lo=50mm)
L=55.50mm
4)破断部の直径Dと破断後の最小面積Aを測定する
D=12.00mm A=113.04mm2
5)引張強さσを求める (σ=Pmax/Ao より)
σ=119560/153.86=777.070≒777.1[N/mm2]
6)伸びб=(L−Lo)/Lo×100より、絞りφ=AбA/Ao×100を求める
б=11[%] φ=26.530[%]
[3]硬さ試験
▼反発式のショア硬さ試験機により、SS400とS45Cの硬さを求める
↓5回の平均
材質 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | Hs |
黄銅 | 31 | 24 | 24 | 24 | 26 | 26 |
軟鋼 | 24 | 21 | 26 | 23 | 24 | 24 |
鋳鉄 | 34 | 36 | 36 | 34 | 34 | 35 |
アルミニウム | 18 | 19 | 19 | 20 | 18 | 19 |
[4]衝撃試験
▼S45C(焼き入れあり・なし)のシャルピー衝撃値を求めなさい
1)準備
@シャルピー衝撃試験機の使い方を理解する
A金属材料衝撃試験片を正しい位置にセットする
2)試験
B支持レバーを押して、ハンマを自由落下させる
C指針により試験片切断後のハンマの振上り角度(°)を測定する
3)衝撃値を求める
シャルピー衝撃値=
切断に要したエネルギーE/試験片切欠き部の原断面積A [J/cm2]
(A=0.8cm2)
E=WR(cosβ-cosα) [J]
W:ハンマの質量 250[N]
R:ハンマの回転中心から重心までの距離 0.65[m]
α:ハンマの持上げ角度 120°
β:ハンマの振上り角度 ?⇒計測
材質 | β | cosβ | E[J] | シャルピー衝撃値[J/cm2] |
S45C (生)常温 |
80.0° | 0.174 | 109.53 | 136.9 |
S45C (500℃) |
106.5° | -0.284 | 35.1 | 43.9 |
S45C (900℃) |
116.0° | -0.438 | 10.075 | 12.6 |
■グラフ

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