イオン化傾向と電池の仕組み
Point1 イオン化傾向

金属は電解質の水溶液にとけ出すと陽イオンとなります。
種類によってイオンになりやすいもの、なりにくいものがあり、その順番はイオン化傾向と呼ばれます。金属をイオンになりやすい順番にならべてみます。
この順番を覚えておくと塩酸にとけるかどうかもわかり、電池をつくるときどちらが−極になるか判断できて便利です。ていうか覚えなきゃいけないらしいです。

そこで、有名な覚え方「貸そうかな まぁあてにすんな ひどすぎる借金

電池の電極にする2種類の金属は、左にあるほうが−極右にあるほうが+極となります。※水素は金属ではありませんが、金属と同じく陽イオンとなり、いいめやすになるので金属のイオン化傾向の列に特別に参加しています。
いっぱんにイオン化傾向の大きい金属ほど化学変化しやすいです。


☆おさらい
イオン化傾向が大きいとは?
陽イオンになりやすい→電子を放出しやすい→酸化されやすい
イオン化傾向が小さいとは?
陽イオンになりにくい→電子を放出しにくい→酸化されにくい

イオン化傾向が小さい金属イオンを含む水溶液にイオン化傾向の大きな金属単体を浸せきすると?

イオン化傾向の大きな金属が酸化され溶解し、イオン化傾向の小さな金属が還元され析出する

Point2 酸との反応
うすい塩酸やうすい硫酸にとけて水素を発生する金属は、イオン化傾向で見分けることができます。水素よりイオンになりやすい金属は、水素に電子をあたえイオン化します。その結果、水素が発生します。
また、水素よりイオンになりにくい金属は、水素イオンに勝ってイオンになることができないので希塩酸や希硫酸と反応しません。

希塩酸や希硫酸にとけて水素を発生(H)より左に書かれた金属
                         K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb

希塩酸や希硫酸と反応しない    …(H)より右に書かれた金属
                         Cu Hg Ag Pt Au

金属を空気中に放置しておくと酸化してしまう(さびてしまう)金属もあります。
空気中、ふつうの温度

K〜Na  …内部まで酸化
        自然界に単体として存在できません。
Mg〜Cu…表面が酸化
        さびどめをぬれば大丈夫ですね。
Hg〜Au…酸化しない
        金や白金が貴金属と呼ばれるのは、高価なだけでなく、さびないからです。


Point3 陰イオンのイオン化傾向

陰イオンにもイオンとして安定である度合いがあります。紹介しておきましょう。

NO3-
硝酸イオン
> SO42-
硫酸イオン
> OH-
水酸化物イオン
> Cl-
塩化物イオン
> Br-
臭化物イオン
> I-
ヨウ化物イオン

まぁ詳しくは表を丸暗記すれば見えてくるはずです。
イオン化傾向の表

Point1 ボルタ電池

電池(化学電池)に必要なもの

@電解質の水溶液
   ボルタ電池では希硫酸を使用。

A2種類の金属
   電極になる。
   ボルタ電池では亜鉛板と銅板を使っている。

希硫酸に亜鉛板と銅板を入れて導線でつないだものがボルタ電池

起電力:1.1V
(欠点)   長持ちしない   →H2の気泡で※分極がおこる
(対策)
酸化剤(減極剤)を入れる(主に過酸化水素)
※(分極:極板面に付着したH2気泡が極板へのH+の近接を妨げたり、あるいは気泡になる前にH2→2H++2e-というような逆の起電力を生じて電圧が急に下がる現象)

  [(−)Zn→Zn2++2e-]+[(+)2H+2e-→H2↑]=Zn+2H+→Zn2++H2

このボルタ電池を電池式で表すと   (−)Zn|H2SO4aq|Cu(+)

Point2 ダニエル電池


硫酸亜鉛水溶液に亜鉛板を入れたものと、濃い硫酸銅(U)水溶液に銅板を入れたものとの間を素焼き板などで仕切った電池をダニエル電池という。起電力は約1.1Vで、すぐには低下しない。各電極での反応は次のようになる。

  負極(亜鉛板) Zn→Zn2++2e-

  正極(銅板)  Cu2++2e-→Cu↓

 水素の発生がないので、分極は起こらない

電池式  (−)Zn|ZnSO4aq|CuSO4aq|Cu(+)
ダニエル電池を長く使用するためには
CuSO4aqの濃度を濃く、ZnSO4aqの濃度を薄くしたほうが良い。

Point3 実用電池
ここまででわかること

 一般に、電解質水溶液中にイオン化傾向の異なる金属を浸すと、電池ができる。

イオン化傾向の大きい金属が負極、小さい金属が正極となる。

負極では酸化反応、正極では還元反応が起こる。

 電池の起電力は、両極の金属のイオン化傾向の差が大きいほど大きい


マンガン乾電池

 マンガン乾電池
 (−) Zn|NHClaq,ZnClaq|MnO,C (+)
 Zn→Zn2++2e   Zn原子は酸化された
                  生成物はpHによって変化
 MnO+4H+2e→Mn2++2HO   Mn原子は還元された


要は、負極で発生するZn2+を消費するためにNH4+と反応を起こさせ、その結果、@「テトラアンミン亜鉛(U)イオン[Zn(NH3)4]2+」ができる。
さらに正極では水素の発生を防ぐために、酸化剤としてA「酸化マンガン(W)MnO2」を加え、かわりにB「水H2O」を生成させる。


電池から電荷を取り出すことを放電といい,放電した電池に放電と逆の向きに電流を外部から流し,電極で放電と逆の反応をおこす操作を充電といいます。
 ボルタ電池やマンガン乾電池は,充電することができません。このような電池を一次電池といいます。それに対して,充電により繰り返し使用できる電池を二次電池または蓄電池といいます。

Point4 鉛蓄電池

起電力:約2.1

負極:鉛Pb=207
   Pb+SO42-→PbSO4+2e-(酸化)

正極:酸化鉛(W)PbO2→酸化剤としてはたらく。
   PbO2+4H++SO42-+2e-→PbSO4+2H2(還元)

全体では、
   Pb+PbO2+2H2SO42PbSO4+2H2
   (は放電と充電のこと。放電と充電では全くの逆反応が起こる。)

電池式は、
   (−)Pb|H2SO4 aq|PbO2(+)

●特徴
硫酸鉛(U)が白色の固体として両極板に付着する。
 →溶液は汚れにくく、充電しやすい。
  両極板の質量が(正極:239→303、負極:207→303)増加する
・電子2molが通電するのに対して、硫酸も2mol消費され、水が2mol生じる。
 →硫酸の濃度が薄くなる
  →水溶液の密度が小さくなる

充電するときは、負極を電源の負極と、正極を電源の正極に接続して電流を流す。
放電するときは、負極を電源の正極と、正極を電源の負極に接続して電流を流す。

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